虐待予防2015年12月16日更新

はじめに

近年、児童虐待のニュースが毎日のように聞かれ、それによる死亡事件も後を立ちません。児童虐待相談対応件数も年々増加している状況です。

虐待の理由に、「しつけのつもりだった」という話を聞くことがありますが、そもそも「しつけ」とはどのようなものなのでしょうか?「しつけ」は、子どもが自立できるように、子どもの人格と人権を尊重して行われる行為をいいます。そして「虐待」は、親の身勝手による子どもの乱用、子どもに苦痛や成長に悪い影響を与える人権侵害的行為であり、従って、親または養育者がしつけのつもりで行った行為であっても、子どもの成長に悪影響を及ぼすものであれば、その行為は「しつけ」ではなく「虐待」となります。

経済的な不安もなく円満な家庭でも、子育てでいら立ちを抱えている人は多いはずです。

疲れがたまっていると叱る声が大きくなったり、いつもは気にならないお子さんの行動にも過剰に反応してしまうなど、誰しもが経験しているのではないでしょうか。八方ふさがりの状況で子育てをしていると、お子さんの行動に過敏に反応し、それが児童虐待の発端になることもあるのです。早期に発見し対応することが、保護者にとっても子どもにとっても重要です。

児童虐待とは

児童虐待とは、児童の保護者やその周囲の人間などが、児童に対して虐待を加える、もしくは育児放棄をすることです。虐待の種類は以下の4つに分類されます。

身体的虐待
殴る、蹴る、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などにより一室に拘束する など

性的虐待
子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にする など

ネグレクト
家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かない、乳幼児を家に残して度々外出する など

心理的虐待
言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティック・バイオレンス:DV) など

(表引用元:厚生労働省)

原因

多くの場合、ひとつのことが原因ではなく、さまざまな要因が重なったとき、家族関係が不安定になり、子どもの虐待が引き起こされます。

1. 親の要因

・育児負担感、不安
 子育てがうまくいかない、育児について話せる友達がいないなどの、不安によるストレスなど

・親自身が虐待された経験
 精神的なトラウマ、虐待の連鎖

・病気・障害
 病気などの体調不良による養育力の低下

・精神的に不安定な状態
 産後うつやアルコール依存など

2.子どもの要因

・育てにくい子ども
 かんしゃくが激しい、こだわりが強い、言うことを聞かないなど

・病気・障害
 先天異常の疾患、発達の遅れなど

3. 家族を取り巻く要因

・核家族化によるもの
 育児に関して相談できる人がいない

・不安定な夫婦関係
 夫婦喧嘩が絶えない、DVなど

・経済的不安
 収入低下、失業など

・地域からの孤立
 近所の人との付き合いが薄い

虐待を受けた子どもへの影響

生後、脳・こころの発達に重要なのが、母親などの養育者との相互交流です。子どもと母親との間に形成される情緒的絆を、「愛着」といいます。これは、子どもが不安や恐れという不快な状況の中で、特定の人物(母親など)にくっついて、不安を軽減しようとする行動で示されます。乳児が泣く、微笑む、声をあげる、しがみつくなどの行動で要求や欲求を表現し、これを適切に、かつ一貫して応えてくれる特定の人物との相互交流が、愛着形成を促進します。

愛着が形成されることにより、子どもは自分を守ってくれる人を基本的に信頼して依存し、探究心や好奇心により、探索行動を始めます。この探索行動で恐れや危険を感じると、また養育者に接近して安心感・安全保障を感じます。これを養育者が見守り励ましを繰り返すことで、自信と達成感を深めるとともに、次第に「自己」と「非自己」が確認され、自己を育てることができ、同時に脳も発達します。

このようにして、人間は自己が育ち、衝動性や感情調節がコントロールされるようになり、他者との関係も築いていけます。この対人関係を作る能力の基礎は、3歳までに築かれます。

児童虐待の過半数以上は、0歳~小学生までの児童です。虐待は、身体だけでなく、こころの発達にも大きな影響が出ます。

1. 身体の成長

食事を与えられなかったり、栄養が偏ると、身体の発育が悪くなり、慢性的な病気や体力のない病気がちの子どもになったりします。暴力による頭部外傷で脳に障害が生じ、運動機能や言語など知的な発達が遅れます。

2.こころの発達

親から大切にされる経験を持たずに育つと、他の人を信頼することができず、人間関係が築けなくなり、他人に攻撃的になります。

子どもは虐待の苦痛を軽減しようとして、感情や記憶を分裂させる解離(多重人格)が起こることもあります。自分が悪いから虐待されていると考えて自尊心が低くなり、自暴自棄な行動をとります。

このような情緒的に不安定な状態のままで思春期になると、非行や犯罪など反社会的な行動につながっていきます。

また、親が学校に行かせないことで学校の勉強についていけなくなったり、度重なる暴力により、学習するための集中力や意欲に欠け、学力が低下することがあります。

3.子どもの将来

【世代間の連鎖】

虐待をする親の約30%は子どもの頃に虐待を受けた経験を持っているといわれています。
子どもの頃の虐待の体験は、大人になって自分が子育てをするときに、自分の子どもを虐待するという形になって悲劇をくりかえしてしまいます。

【非行や犯罪】

幼少時に基本的なコミュニケーション(反応に答えてくれる)が不足していると他者との信頼関係が築けなくなります。大人に過剰に反応したり、他の子どもを攻撃したりする行動をとります。これがエスカレートすると非行や犯罪につながります。

虐待を防ぐために

ママへ

「虐待」というと、「虐待」=「犯罪」「悪いのは親」というイメージがあり、虐待かなと自分で思っても、なかなか周りに相談しにくい状況にあるかもしれません。相談すると、虐待をする「悪い」保護者とレッテルを貼られるかもしれない、そんな事をしてしまう親だと知られたくないという思いから、相談を躊躇してしまうこともあると思います。

しかし、思い出してください。妊娠が分かったときの気持ち、つらい出産を乗り越えて初めて我が子の顔を見たときの気持ち、こんな家庭を作りたいなと思い巡らせていたときの気持ち...。きっとキラキラと輝き、嬉しく楽しい気持ちでいっぱいだったと思います。でも子育てはそう嬉しく楽しいときばかりではありませんよね。今まで自分の思い通りにいっていた生活から、完全に何もできない赤ちゃんのペースに、24時間合わせるのですから。そんな生活を独身時代に知っている人はいません。だからみんな悩み・不安の中で育児しているのです。みんな同じなのです。

では、虐待してしまう親、そうでない親、何が違うのでしょうか?それは、母親自身の忍耐力や理性もありますが、他の人に悩みを話せているかどうかが大きいと思います。今まで、自分が悩んでいたことを他の人に話して、解決はしなくても、ふっと気持ちが軽くなった経験はありませんか?育児もそれと同じだと思います。ただ話せばいいのです。あとは、他人と比べすぎないこと、理想を押し付けないこと、子どもはこういうものと思う気持ちも大切かもしれません。虐待から子どもを守ることはもちろんですが、親自身、本当はどうしていいか助けを求めているはずです。

身近にできる、話すことから始めてみませんか?きっと解決の糸口が見えてくるはずです。

家族・地域の方へ

子どもへの虐待は、行政や関係機関による対応だけでなく、家族や地域の方の協力があってはじめて、未然に防いだり、早期発見することができ、子どもたちの大切な命を守ることができます。悲しい事件が繰り返されないように、地域の皆さんが協力し合い、子どもたちの健やかな成長を支えていきましょう。

しかし、ひとつお願いがあります。虐待を見かけただけで、親を決して責めないでください。子どもの虐待は様々ですが、虐待する親の大半は、ひとりで苦しみ、悩み続けた結果が子どもへの虐待となって現れているのです。虐待していると見られた親は、近所から敬遠されてしまうと、一層社会から孤立してしまいます。そんな方にこそ家族や地域の方の助けが必要なのです。

お役立ちリンク

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