
思春期とダイエット2016年03月15日更新
はじめに
スリムな体型は美しさ・健康の象徴と考える女性が増え、「やせてきれいになりたい」という願望から、最近は中学生や高校生にも、場合によると小学生にまでダイエット志向が強くなっていると言われています。
実際に、国民健康・栄養調査によると、若年層のやせが増えており、BMI18.5以下の低体重の割合が20年間で2倍に増加しています。
思春期は、身体も心も大きく成長する大切な時期です。この時期に無理なダイエットをしてしまうと、未来にどんな影響が起こると思いますか?
思春期の身体の成長
思春期は、第二次性徴とともに始まります。女子は10歳ぐらい、男子は12歳ぐらいから急に身長が伸び始め、男女によって体つきや生理現象にも違いが見られるようになります(第二次性徴)。その発育、発達の速度や程度には個人差があるため、周りの人と比べて心配する必要はありません。
思春期の成長は2つの大きなホルモンが関与し、その1つ目は成長ホルモンといわれるものです。成長ホルモンは、脳下垂体から分泌されるホルモンで、骨、筋肉、内蔵、皮膚、毛などの成長を促進します。
2つ目は性ホルモンといわれるもので、ホルモンの働きにより、男らしさ、女らしさが現れてきます。性ホルモンは、精巣や卵巣から分泌されるホルモンで、それらの働きにより、男子は精通、女子は月経が始まります。
【女子の変化】 【男子の変化】
・乳房が発達する ・声変わり
・発毛(わき、性器) ・発毛(わき、性器)
・皮下脂肪が増える ・筋肉が発達する
・腰骨が広くなる ・肩幅が広くなる
・丸みのある体つきになる ・たくましい体つきになる
ダイエットが及ぼす悪影響
断食や厳しい食事制限を急激に行うと、成長期の身体は栄養を蓄えるどころか失うことになります。思春期はまだ成長の真っ最中、栄養は骨、筋肉、臓器、脳...身体の全ての部分を作るのに必要です。特にホルモンは、脂肪をもとに構成されているため、脂肪を極端に制限するダイエットは大変危険です。
しかし、思春期ではそのようなことはあまり考えずに、目の前のことを気にしてダイエットをしてしまうことが多々あります。
では、大切な成長期に無理なダイエットをした場合、後にどんな悪影響を及ぼすのか考えてみましょう。
不妊症になりやすくなる
この時期は女性ホルモンによって皮下脂肪がつきやすくなり、女性としての機能を体の内部から作っているため太りやすくなります。そしてこの皮下脂肪は体を冷えから守り妊娠を整える体のベースを作っているのです。また、このことは女性が良い出産ができるようにする準備段階とも言えます。妊娠をするには女性ホルモンが正常に作用しなければいけません。
しかし無理なダイエットによって体重の15〜20%痩せてしまう(例えば、体重50kgの人の場合、7.5kg~10kgの体重減少)と、脳は生命の危機を感じ、生命維持に関係のない機能はストップさせて、エネルギーを節約しようとします。生殖機能は生命維持に関係ないので、視床下部から分泌されるべき性線刺激ホルモンが出なくなり生理が止まってしまう「体重減少性無月経」の状態になります。また排卵をさせるエストロゲンの分泌は脂肪量を20〜30%必要としますので、無理なダイエットで脂肪分を減らし過ぎると、妊娠しづらくなってしまいます。そして無月経の期間が長いと、子宮が小さく萎縮したり、ホルモンに反応しづらかったりするので、妊娠を希望したときに、できにくくなる可能性もあります。
筋肉が衰える
思春期の女性は、脂肪と同時に筋肉を落とそうとさらに過激な食事制限を行ってしまう傾向にあります。筋肉を落とすことは基礎代謝量も増えず、逆に痩せにくい体質になる他、たるみが出たりして、スタイルが崩れ老けた印象にもなってしまいます。
低身長
成長に関わるホルモンの異常をきたし、身長の増加が鈍ります(身長の伸びは高校生くらいまでとされています)
骨がもろくなる
女性ホルモンは50歳前後でその役割を終えると、骨の量を維持していたエストロゲンもなくなってしまうので、骨粗鬆症が起こりやすくなります。
しかし思春期に食事制限をしすぎたダイエットが要因になり、女性ホルモンの分泌に異常が起こってしまった場合も同様に骨が弱くなってしまいます。
若いうちに無用なダイエットで健康を損なっては、実際閉経を迎えた時の症状がかなり心配されます。
摂食障害を引き起こすことも
摂食障害とは、食行動に異常をきたしている状態のことを言います。ダイエットがきっかけで拒食症や過食症といった摂食障害に進んでしまうことがあります。また思春期は学校や勉強の悩みなどストレスが多くあるため、食行動に異常を起こし、摂食障害が悪化してしまうこともあります。
もし摂食障害の状態になると、栄養を吸収しようとする身体の機能が働かず、命に関わることにもなりかねません。また重いうつや体の合併症などを引き起こす事があり、病院で治療を受けたり入院しなければならなくなる場合もあるので、ダイエットを安易に考えてはいけません。
その他
安易に食事を抜いたり制限することで栄養不足になり、痩せる前に、朝起きられない、生理不順になる、吹き出物が出る、肌荒れ・乾燥、髪がぱさぱさになる、爪が弱くなる、集中力が低下する、イライラする、疲れやすい、便秘、むくみ...といったトラブルを引き起こしやすくなります。朝起きられない、集中力が低下するなどの症状は、学校生活にも影響してしまいます。
思春期やせ症
健康な人が過激なダイエットをして標準体重(※)の85%を切るまでやせると、必ず脳が反応して生体防御反応としての食べたいという欲求が出てきます。そして、リバウンドという結果になります。でも、本人の心の問題を心で解決できず、食べないという誤った摂食行動で解消しようとして極端に体がやせてしまい(標準体重の80%以下)、やがてさまざまな障害を引き起こす場合があります。このような、心の問題によってやせていく症状を「やせ症」と呼んでいます。
やせ症の病理について知っておきましょう。体がやせると、体重計の数値が減るのを見たり、他人から「やせたね」と言われたりすることで達成感を覚えます。また、栄養不足になると、苦痛を和らげようと脳から麻薬のような物質が分泌され、それによって嫌なことにも取り組むことができるようになります。飢餓に伴う一時的な気分の高揚がみられます。そのため、自分の行動は悪いことではないと勘違いし、「思春期やせ症」が発症していても、本人も周りも間違ったダイエットをしていることに気付けず、さらに症状を悪化させていくことになります。
※標準体重
標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22
おわりに
無理なダイエットは、いつまでも続きません。食べたい衝動に負けてつい食べてしまい、またもとの体重に戻ってしまいます。
カロリーを極端におさえた食事をしていると、身体はエネルギーをできるだけ使わないようにためこもうとする「省エネ」体質になります。ですから、反対に前より太りやすい体質になってしまうのです。「減量」と「リバウンド」を何度も繰り返していると、減量はだんだん難しくなる可能性もあります。
また短期間に急激に体重を減らしてしまうと、減るのは体脂肪ではなく、筋肉や内臓組織、血液など必要なものばかりです。
あなたには本当にダイエットが必要ですか?ダイエットは、将来の自分の健康を維持するために行い、BMI値(※)を参考に、以下のルールを守って適切に行いましょう。
・3度の食事をバランスよくとる
・断食をしない
・高カロリーの食事、間食は控える
・水分を十分にとる
・有酸素運動をする(筋肉をつけると基礎代謝があがるため、痩せやすい身体になる)
・BMI指数は、22のときに最も病気になりにくくなります。
・肥満度が高くなると、生活習慣病(糖尿病・高血圧・高脂血症など)の確率が高くなります。
BMI指数は、22のときに最も病気になりにくくなります。
肥満度が高くなると、生活習慣病(糖尿病・高血圧・高脂血症など)の確率が高くなります。